大変ありがたいことにご厚意で本を送っていただくことがあるのですが、ここ最近は書評を書く時間が取れないので、一律に辞退させていただいています。すみません。 ということで、タイトルの「最近献本を断っている理由」は、書く時間が取れない。以上。で終わりの話なんですが、もう少しだけ思うところがあり、筆を執っています。
(注:「献本」は、私は本を送っていただく側なので正しい用法ではないと思いますが、便宜上使わせてください)
はじめに
別に誰が悪いとかではなく、突き詰めて言えばたぶん、私は人からものをもらうのを病的に嫌っているみたいなところがあり、そこが悪い、私が悪いです。 この文章は、誰かを責めるために書いているものではないので、申し訳なく思ったりする必要はないです。なにひとつ。
ただ、現実として、献本が送られてきてしまうという事故が去年数回あり、無礼なことだとは承知ながら「突き返す」という対応になってしまって本当に申し訳なかったので、「おれはこんなにも献本を受け取れないんです!!」という弁明のため、保身のために書いています。 (ちなみに、会社に送ってくださった方がいたようなのですが、去年は出社してなくてまだ受け取れてすらいません...。追って返送させてください。すみません)
というのが99%。
残りの1%は、「ほんとにこのままでいいの?」というニッチなもやもや感を共有したかったからです。 ああ、こんな考え方もあるんだなあ、くらいに受け取ってもらえれば。
理由はふたつあります。
理由1: その本がクソだった時にためらいなく撃ち抜く勇気と気力がない
知り合いが本を書いたので楽しみに開いてみたら、中身はクソだった。
みたいな経験はないでしょうか? なければ、「知り合いが」の部分を「推しが」とかに読み替えてもらっても大丈夫です。 そんなとき、あなたならどうしますか? その人のことは応援したいけど、本に書かれていることは役に立たないどころか間違いだらけで、 「この本はクソなので買わない方がいいですよ」と叫んで回った方が世の中のためになる。 そう確信してしまった時、あなたならどうするでしょうか。ためらいなくその引き金を引けますか?
まあ、ここは、どういう態度が正解とかはないと思っています。 「内容はどうであれ、出版文化を盛り上げたいので宣伝する」というスタンスも、それはそれで筋が通っているでしょう。 「自分が価値を感じないだけで、他の人には役立つかもしれないので、予断なくディスるのはよくない。読む人が判断すればいい」という気持ちもわかります。
ただ、私は、ひとりひとり感じ方が違うからこそ、自分が思ったことを率直に出していくのが真摯な姿勢だと考えています。 これは、私は海外のシンセ系ユーチューバーの動画をよく見るんですが、彼ら彼女らが悩みながらも率直なレビューを出している姿の影響が大きいのかもしれません。 シンセの使い方も好みも様々なので自分のレビューが万人に当てはまるものではないこともわかりつつ、自分が「よい」「悪い」と言うことで必要以上に視聴者に影響を与えてしまうことに苦悩しつつ(ほんとにそれで心を病んでしまうユーチューバーもいます)、それでも、言うべきことは言っていく。 まあ、私は何を書こうが影響力なんてほとんどないわけで、引き合いに出すのもおこがましいですが、もし本の紹介をするならこういう姿勢でいきたいと思っています。
そもそも、技術書の書評はあまり書いていませんが、これまでも、真剣に読んだ本については真剣に書評を書いてきたつもりです。 そして、ダメなところはダメだとこき下ろしたりしてきました。 もし自分が著者だったら読みたくないだろうな...、みたいなことも書いてきた自覚があります。
そういう姿勢で十数年やってきたので、知り合いだからといって評価を緩くしたりすることはできません。 かといって、知り合いの書いた本をためらいなく撃ち抜くほどの勇気はありません。
また、もし勇気が出たとして、「この本はここがいい」みたいなポジティブなことは気軽に書けますが、ネガティブなことはそうはいきません。 褒めるには感情があれば十分ですが、貶すには論理が必要です。 相手が聞きたくないようなことを書くからには、適当なことは言えないので、かなり丁寧に文章を練ります。
しかし、悪いことに、私は文章を書くのがめちゃくちゃ遅いです。 1つの書評を書くのに、(休み休みとはいえ)丸一日とかかかります。 自分の専門分野であるR関連の技術書となると、なおさら適当なことを言えないので、まるまる数日かかると見積もっています。 さすがにそんなに時間を捻出するほどの自信がない、というのが理由の1つ目です。
理由2: 献本を受け取る人の男性比率を上げたくない
これはまあ、自分が辞退すれば女性比率が上がるのかというとそんなことはないと思うんですけど、数年前から思ってることです。 もう2020年代なんだし、できれば献本先はジェンダーバランスを考慮して調整してもらえないでしょうか。
もちろん、宣伝効果を考えての商業行為なので、コミュニティに影響力がある人を選びたい、という基準で選ぶと、もともとコミュニティが男性に偏っていれば献本先も男性に偏ってしまうのはまあわかります。 ただ、これは逆に言うと、「献本を受け取るような人 = コミュニティに影響力のあるすごい人」というイメージの結びつきがあり、 男性にばかり献本することで「コミュニティに影響あるすごい人は男性ばっかり」というイメージを再生産してしまうのではないか、という気持ちがあります。
難しいとは思うのですが、献本という行為の副作用を踏まえて、ジェンダーバランスに配慮してもらえるとありがたいです。
これに限らず、執筆者とか、カンファレンスの登壇者とかも、なるべくジェンダーバランスがとれたかたちに調整されるべきじゃないかなと思っています。 (まあ、インターネット上だとそもそもジェンダーが分からないことも多いし、簡単ではないのはわかります)
といって、私は人見知りなので、推薦できるような知り合いがそもそも男女問わずほとんどおらず、できることはただお願いするだけなんですけど...。 言いっぱなしで投げるみたいな感じになってしまいすみません。